東洋医学の診断法 気血水

「気・血・水」は、不調の原因を探るためのものさし。

「気・血・水」は、人間の生命エネルギーと身体の働きを示していて、病理的状態をある程度判断するための観察ポイントと考えることができます。生理学的に平素の正常な状態を把握し、病気によってそれがどのように変化するかを気・血・水でみていきます。
これら3つの要素は体内を循環していて、それぞれがうっ帯、偏在することによって体内に異常が生じ、それがさまざまな病気や障害の原因になっていると考えられています。
「気・血・水」は大まかな病態をとらえる手段としてとても重要です。

気とその異常
「気」は形として目には見えませんが、身体を支えるエネルギーを意味します。「気力が充実する」「気落ちする」「気が抜ける」など、日常的にも気という言葉はよく使われています。
これらの言葉からも、気とは体内を流れる生命エネルギーととらえられていることがわかります。医学的には、精神神経系の働きに近いと考えられます。
気の異常には「気虚」「気滞」「気逆」があります。
気虚
全身的に気が不足して元気がない状態です。症状としては、元気が出ない、身体がだるい、疲れやすい、意欲・食欲がない、日中の眠気などがあります。原因の多くは胃腸機能低下によるとされます。
気滞
体内を流れる気が、どこかにうっ滞して気の流れが滞っている、いわばストレスの溜まった状態といえます。頭重感、咽喉がつまる、胸苦しさ、不眠、四肢のだるさ、倦怠感などの症状が現れます。
気逆
気は、体内を上から下に流れているとされます。その気の流れが、下から上に逆行している状態です。のぼせ、動悸、頭痛、発汗、不安、焦燥感、顔面の紅潮といった症状がみられます。

血とその異常
「血」の概念としては、物質的には血液を指し、漢方的には血液の機能をも含みます。気とともに体内を巡り、各組織に栄養を与えるものと考えます。
血の異常には「血虚」と「瘀血」があります。
血虚
血の機能が弱くなった状態をいいます。いわゆる西洋医学での貧血も含まれますが、たとえヘモグロビン値が正常でも、機能がうまく作用していない状態のことも指します。
所見として、貧血、皮膚のかさつき、爪の変形が観察されます。また、爪が脆い、髪が抜ける、集中力低下、こむら返り、過少月経といった症状が現れます。
瘀血
末梢循環が滞っている状態で、さまざまな障害を引き起こします。血管が閉塞して起こる脳梗塞や心筋梗塞も血流が滞っている状態にあることからお血としてとらえられます。
また、足の静脈瘤も血流が滞って血管が腫れるので、やはりお血の一種と考えます。所見として唇や舌の暗赤色化、色素沈着、静脈瘤、目の下のクマなどがみられます。症状としては、口渇、痔、月経異常などがあります。

水の異常
「水」は赤血球以外の透明な液体--体液や分泌液、尿、浸出液などを指します。また生理的体液を「津液」、病的な非生理的体液を「痰」あるいは「飲」「痰飲」と呼びます。
水の異常には「水滞」があります。
水滞
水が滞ったり、どこかに偏在したり、残帯の量が増えたりすることで、病気や障害が引き起こされている状態をいいます。代表的な疾患としては浮腫があり、ほかに舌歯痕の所見がみられます。
症状としては、めまい、立ちくらみ、頭重感、悪心、下痢などがあります。


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