東洋医学の養生法 ダイエット

食物繊維は、人の消化酵素では消化できない食物成分です。そのため、口から入った食物繊維は、胃や小腸では消化されず、そのまま大腸にやってきます。大腸に入った食物繊維は、腸内に住み着く腸内細菌によって発酵・分解を受けます。この発酵によって、メタンガスなどのガスとともに、「短鎖脂肪酸」という物質が作り出されます。短鎖脂肪酸には、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあります。

生成された短鎖脂肪酸は、大腸で吸収されてエネルギー源として使われたり、腸内を弱酸性の環境にすることで悪玉菌の増殖を抑制し、腸内環境を良好な状態に保ったりする作用があります。

食物繊維は腸内に住み着く腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整えるのにも有用であるとされています。ここでは、食物繊維の摂取量を増やすことで腸内細菌のバランスがどのように変わり、それが体重減少に影響するかを調べたアメリカ・イリノイ大学で行われた研究を紹介します。

研究は、日頃から1日に14g以上の食物繊維を摂取している健康な成人男性を対象に行われました。食物繊維の摂取量を増やすことによる腸内細菌への影響を調べるため、水に溶ける水溶性食物繊維の一種であるポリデキストロース21gが入ったスナックバー、またはトウモロコシの食物繊維21gが入ったスナックバーを、3週間にわたって食事に追加して食べてもらいました。

研究期間終了後、被験者の便のサンプルを回収し、それをもとに、便に存在するすべての腸内細菌の情報を得るため、全ゲノム配列(遺伝情報)を解析しました。

その結果、ポリデキストロースとトウモロコシの食物繊維いずれの場合も、食物繊維を追加で摂取した人の腸では、ファーミキューテス門というグループの細菌に対して、バクテロイデス門というグループの細菌の割合が増えていたことがわかりました。以前の研究で、バクテロイデス門の割合が高い人はスリムな傾向にあり、ファーミキューテス門の割合が高い人は肥満傾向にあることが明らかになっています。つまり、食物繊維の摂取量を増やすことで、痩せやすくなる、あるいは肥満を予防できる可能性があるということです。

食物繊維をたくさん摂取することで変化した腸内細菌のバランスは、食物繊維の摂取量が減ると以前の状態に戻ってしまうということが分かっています。腸内の環境を維持したいなら、日頃の食生活を改善し、食物繊維を毎日たくさん摂取する必要がありそうです。

食物繊維には、脂質異常症などのさまざまな生活習慣病の予防に効果があると考えられており、厚生労働省は成人男性で1日あたり20g以上、成人女性で18g以上を目標に摂取すべきだとしています。しかし、2014年の国民健康・栄養調査によると、成人の1日あたりの食物繊維摂取量は14.8gで、多くの人が食物繊維を十分摂れていないというのが現状です。

病気の予防はもちろん、スリムな体型を維持するためにも、玄米などの全粒穀物や豆類、野菜、果物など、食物繊維を多く含む食品を日頃からたくさん食べるようにしましょう。
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