東洋医学の治療法 アトピー性皮膚炎1

いくら体に合わせた漢方薬を服用しても、悪い食事や悪い生活習慣を続けるのならば、絶対に良くはなりません。
食事や生活を改善出来ないのならば、漢方をはじめてもお金の無駄です。

漢方でもステロイドでも、自分の生活スタイルに合った治療方法を選択するのが肝心でしょう。生活習慣の改善と言っても、あまり無茶をしない、タバコを吸う方は本数を減らす、または止める、皮膚が感染しないように清潔にしておく・・・など普通のことです。

この先長い病気ですので、タバコを吸うなとは言いませんし、お酒も飲むなとは言いません。「言われていたので今夜はもうこれで帰ろう。」とほんの少し気にとめておけばよいと思いますよ。

食生活の注意点は、脂物や白砂糖を使ったお菓子、生クリームなどを控える、などですが、これはみなさん注意されています。意外と知られていないのには餅米なども良くありません。餅米にはヒスタミン分泌を亢進させる作用がありますので、アトピー性皮膚炎などは悪化します。ですからお餅だけではなく、煎餅も要注意です。

クリスマスでケーキを食べて悪化、正月に餅を食べてアトピーが悪化・・・する方は多いです。でも、それらも生きていく上での大切な楽しみの一つなので、少しずつ気を付けていけばよいのではないでしょうか。生活習慣の改善はあくまでも無理しない範囲で、ストレスにならない程度から徐々に改善していけばよいと思います。

漢方治療は個人、個人に合わせておこないます。ですから、同じ病気であっても、人によって処方が違う事があります。

アトピー性皮膚炎の場合、「乾燥タイプかジクジクタイプか」、「『気』は足りているのか、回っているのか」、「『血』の流れは良いのか」、などに注意して考えて漢方の処方を決めていきます。

ジクジクタイプのアトピー性皮膚炎では消風散(しょうふうさん)、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などが、よく用いられる代表的な漢方処方です。
特に「消風散は夏に増悪するものによい。」と本にも記載されています。消風散は分泌物が多く、皮膚表面にカサブタが出来てしまう様なタイプによく使います。消風散は発表力が強いので、効果を表す時には一時的に分泌物が増えることがあります。

越婢加朮湯は消風散よりも、皮膚がパンパンに腫れて、いかにも皮下に水が溜まっている様に見えるタイプのアトピーに効果があります。

一方、ドライタイプのアトピー性皮膚炎の代表は、なんと言っても温清飲でしょう。
温清飲は不思議な処方で、熱性の四物湯と冷性の黄連解毒湯の一対一の合方になります。言ってみれば、熱いご飯に冷たいお茶をかけた様なものです。

四物湯は「血」の質や「血」の巡りを改善します。漢方では、皮膚の乾燥や赤黒いのは「血」の巡りや質が悪いと考えますから、四物湯は是非とも使いたい処方です。
しかし単独でアトピー性皮膚炎の様な熱を呈している状態に使うと、さらに赤味が酷くなったり、痒みが酷くなったりします。そこでその熱を冷ましてくれる黄連解毒湯を加わえるのです。もちろんこれは四物湯の温性作用を緩和するだけではなく、アトピー性皮膚炎自身の熱をも冷ましてくれます。

よくアトピー性皮膚炎で使われる荊芥連翹湯や柴胡清肝散などは、その構成成分に温清飲を含んでいます。すなわち、「温清飲プラス何種類かの生薬」で構成されています。
このことより、四物湯や黄連解毒湯、さらには温清飲がアトピー性皮膚炎の漢方治療の中心になっていることが分かると思います。
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